「在宅勤務になってから、ほとんど立ち上がらない一日がある」「気づくと数時間、同じ姿勢で座りっぱなしだった」「運動はたまにしているのに、なんだか体が重い」。こうした生活のなかで近年注目されているのが、いわゆる「座りすぎ」のリスクです。結論から言えば、長時間座り続ける状態(座位行動)は、運動習慣の有無とは別に健康へ影響しうると考えられており、日本人は世界のなかでも座っている時間が長い傾向が報告されています。一方で、対策は「ジムに通う」ような大がかりなものでなくても、こまめに立つ・歩くといった小さな習慣の積み重ねから始められるとされています。この記事では、座りすぎが体に及ぼすと考えられる影響、運動不足との違い、リスクを減らす最小習慣、そして受診の目安までを順に整理します。

そもそも「座りすぎ(座位行動)」とは何か

「座りすぎ」は日常的によく使われる言葉ですが、健康分野では「座位行動(ざいこうどう)」という用語で整理されています。座位行動とは、起きている時間のうち、座ったり横になったりした状態で、エネルギー消費が比較的少ない過ごし方を指すとされています。具体的には、デスクワーク、車や電車での移動、テレビやスマートフォンを見ながら座って過ごす時間などが当てはまります。

ここで大切なのは、座位行動は「運動をしていない時間」とイコールではない、という点です。運動は「体を活発に動かしているかどうか」、座位行動は「座って過ごしているかどうか」を表しており、別々の軸として捉えられています。つまり、ときどき運動をしている人でも、それ以外の大半を座って過ごしていれば、座位行動は長くなりうるということです。

「座りすぎ」は、運動の有無とは別の切り口。まずは”座り続けている時間”そのものに目を向けると整理しやすくなります。

日本人は、各国と比べても座っている時間が長い傾向が指摘されています。在宅勤務やデスクワーク中心の働き方、移動や余暇でも座って過ごす時間が増えやすい生活様式が背景にあると考えられています。まずは、その座りすぎが体に何をもたらしうるのかを見ていきます。

座りすぎが体に及ぼすと考えられる影響

長時間座り続けると、足の大きな筋肉がほとんど使われず、血流や代謝の働きが緩やかになりやすいと考えられています。こうした状態が日常的に続くと、さまざまな健康面への影響と関連しうることが、複数の研究で報告されています。あくまで関連が指摘されている段階であり、座っている時間が長いほど一律にリスクが決まるわけではありませんが、傾向として知っておくと役立ちます。

関わりが指摘される領域 体で起きていると考えられること 整え方の方向性
血糖・代謝 食後に筋肉が糖を取り込む働きが鈍りやすい 食後に少し歩く・立つ
血液のめぐり 下半身の血流が滞り、むくみを感じやすい こまめに立って足を動かす
体重・体脂肪 消費エネルギーが少なくなりやすい 日中の活動量を底上げする
心臓・血管 長期的な負担との関連が指摘されている 座りっぱなしを区切る習慣を
肩・腰・首 同じ姿勢の継続でこり・痛みが出やすい 姿勢を変え、軽く動かす
気分・メンタル 活動量の低下が気分の重さと関連しうる 外に出る・体を動かす機会を作る

研究のなかには、座っている時間が長い人ほど、総死亡や心臓・血管の病気による死亡のリスクが高くなる傾向が示されたものもあります。座位行動と死亡率の関連を整理した情報でも、座位行動が長いことは健康リスクと関連しうると示されています。ただし、これらは集団を対象に「傾向」を見たものであり、座った時間の長さだけで個人の健康がすべて決まるわけではない点には注意が必要です。とはいえ、座り続ける時間を減らす工夫には意味があると考えられています。

「座りすぎ」と「運動不足」は別の問題

「週末にしっかり運動しているから、平日は座りっぱなしでも大丈夫」と考えたくなりますが、座りすぎと運動不足は別の問題として捉えたほうがよいとされています。研究のなかには、定期的に運動している人でも、それ以外の時間を長く座って過ごしていると、健康面のリスクが必ずしも帳消しにならない可能性を示すものもあります。

イメージとしては、「運動で活発に動く時間」と「座り続ける時間」は、家計でいう収入と支出のように別々の項目です。まとまった運動で活動量を増やすことも大切ですが、それとは別に、座り続ける時間そのものを短く区切っていく発想が役立つと考えられています。両方に取り組むことで、生活全体のバランスが整いやすくなります。

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つまり、運動の時間を確保しつつ、日常のなかで「30分〜1時間に一度は立ち上がる」「座りっぱなしを細かく区切る」といった工夫を重ねることが、現実的なアプローチだと考えられています。次に、そもそもどれくらい体を動かすことが目安とされているのかを見ていきます。

どれくらい体を動かせばよいのか

体をどれくらい動かすとよいのかについては、公的なガイドが目安を示しています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に向けて、歩行やそれと同じくらいの強さの身体活動を1日合計60分以上(おおむね1日8,000歩以上に相当)行うことに加え、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意することが示されています。あわせて、筋力を保つための運動を週2〜3回取り入れることも勧められています。

「合計」で考えると始めやすい

大切なのは、これらをまとめて達成しようとしなくてよい、という点です。通勤や買い物での歩行、家事で動く時間なども含めて「合計」で考えると、ハードルは下がります。まとまった運動の時間がとれない日でも、こまめな立ち歩きを積み上げることで、日中の活動量を底上げできると考えられています。

無理のない範囲で、少しずつ増やす

同ガイドでは、いまの活動量からほんの少しでも増やすことに意味があるとされ、運動の強さや量には個人差があることも前提とされています。持病のある方や運動に慣れていない方は、急に強い運動を始めるのではなく、歩く時間を少し延ばす、立ち上がる回数を増やすといった、無理のない一歩から始めるのが安心です。体調に不安がある場合は、事前に医師に相談してください。

今日から始める最小習慣リスト

座りすぎ対策は、特別な道具も時間も必要ありません。次のうち、できそうなものから取り入れてみてください。ポイントは「座り続ける時間を細かく区切る」ことです。

すべてを一度に変える必要はありません。まずは「1時間に一度立つ」など一つの習慣から始め、定着したら次を足していくくらいのペースが続けやすいと考えられています。完璧を目指すより、無理なく継続することが何より大切です。

注意点と受診の目安

座りすぎ対策はあくまで生活習慣を整えるための工夫であり、特定の病気を防いだり治したりすることを保証するものではありません。インターネット上には効果を誇張した情報も見られるため、過度な期待は避け、生活全体を整える一環として取り入れるのが安心です。持病がある方、運動に不安がある方、妊娠中・授乳中の方、高齢の方は、運動量を増やす前に医師や専門家に相談してください。

また、長時間同じ姿勢のあとに、片方のふくらはぎの強い腫れや痛み、息切れや胸の痛みが現れた場合、立ちくらみや動悸が続く場合、しびれや強い痛みが取れない場合などは、生活習慣の見直しだけで様子を見ず、早めに医療機関に相談することが大切です。気になる症状や体調の変化があるときは、自己判断を避け、専門家に相談してください。

よくある質問

1時間座り続けると体に悪いのですか?

1時間という明確な境界で体に害が出ると決まっているわけではありません。ただし、座り続ける時間が長くなるほど健康面のリスクと関連しうるとされているため、「長く座り続けないよう、こまめに区切る」という考え方が役立つと考えられています。目安として30分〜1時間に一度立ち上がる習慣がよくすすめられています。

週末にまとめて運動すれば、平日の座りすぎは帳消しになりますか?

運動と座りすぎは別の問題と考えられており、まとまった運動をしていても、それ以外を長く座って過ごしていると、リスクが必ずしも打ち消されない可能性が指摘されています。運動の時間を確保しつつ、日常で座り続ける時間を区切る工夫も、あわせて行うのが現実的です。

立って仕事をすれば座りすぎ対策になりますか?

立つ時間を増やすことは、座り続ける時間を区切る一つの方法として役立つと考えられています。ただし、ずっと立ちっぱなしも体に負担となることがあるため、「立つ・座る・歩く」を組み合わせ、こまめに姿勢を変えることが大切です。

こまめに動くと言っても、どれくらいでよいのですか?

厳密な回数の決まりはありませんが、30分〜1時間に一度立ち上がり、数分動くことが一つの目安としてよく挙げられます。あわせて、1日合計で歩行などの身体活動を増やしていくことが、公的なガイドでも示されています。まずはいまより少し増やすことから始めましょう。

運動が苦手でも続けられる対策はありますか?

運動が得意でなくても、立ち上がる回数を増やす、食後に少し歩く、階段を使うといった日常の動作の積み重ねから始められます。これらは特別な時間や道具が要らないため、続けやすい工夫として取り入れやすいと考えられています。

まとめ

「座りすぎ(座位行動)」は、運動の有無とは別の切り口で健康に影響しうると考えられており、日本人は座っている時間が長い傾向が指摘されています。長く座り続けると血流や代謝が緩やかになりやすく、血糖・代謝、心臓・血管、体重、気分などとの関連が複数の研究で報告されています。大切なのは、まとまった運動とは別に、座り続ける時間そのものを細かく区切る発想です。30分〜1時間に一度立つ、食後に少し歩く、移動でこまめに動くといった最小習慣から、無理なく一つずつ続けていきましょう。片方のふくらはぎの強い腫れや痛み、息切れ、胸の痛みなど気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関に相談してください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。体調不良や気になる症状が続く・つらい場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

参考文献

編集:Wellstate編集部/監修:準備中