「リラックス方法を調べると呼吸法・筋弛緩法・瞑想といろいろ出てきて、結局どれをやればいいか分からない」「一つ試してみたけれど、自分には合わなかった気がする」。そう感じたことはないでしょうか。結論から言えば、リラクセーション法は一つに絞る必要はなく、体からアプローチする方法と心からアプローチする方法を、状況や好みに応じて使い分けるものだと考えられています。本記事では、リラクセーション法について以下のポイントを中心に解説します。

ぜひ最後までお読みください。

リラクセーション法とは何か

リラクセーション法とは、体や心に意図的に働きかけて、緊張状態から落ち着いた状態へと導く技法の総称です。緊張が続くと筋肉がこわばり、呼吸が浅くなり、思考も休まりにくくなりますが、これらは互いに影響し合っていると考えられています。そのため、体の緊張をゆるめるアプローチ(筋弛緩法・呼吸法)と、心の落ち着きを促すアプローチ(自律訓練法・イメージ法・ボディスキャン)のどちらからでも、全体を緩める入り口になり得るとされています。

リラクセーション法は「どれが一番効くか」ではなく、「今の自分にどれが合うか」で選ぶものです。

系統的レビューやメタ分析では、リラクセーション訓練全体としてストレス・不安・抑うつへの一定の効果が報告されていますが、効果量は研究によって小〜中程度にとどまることが多く、対照群の設定が難しいという方法論上の限界も指摘されています[1][2]。「必ず効く」ものではなく、「合えば助けになりやすい」ものとして捉えるのが実際的です。

5つの代表的なリラクセーション法を比較する

まずは全体像をつかむために、代表的な5つの方法を向き不向き・所要時間・やりやすさで比較します。

方法 向いている場面・人 所要時間の目安 やりやすさ
漸進的筋弛緩法(PMR) 体のこわばりを自覚しやすい人、手順どおり進めたい人 10〜20分(短縮版は5分程度) やさしい。手順が明確で初心者向き
自律訓練法 継続して取り組める人。できれば指導者のもとで学びたい人 1回15〜22分、習得まで数週間〜数か月 難しい。自己流での習得はハードルが高い
呼吸法 すきま時間に、その場ですぐ落ち着きたい人 1〜5分から可能 やさしい。道具も場所も選ばない
ボディスキャン 横になれる環境があり、体の感覚をじっくり観察したい人 10〜20分(短縮版は5分程度) ふつう。眠くなりやすく集中の維持に慣れが要る
イメージ法(誘導イメージ) 視覚的な想像が得意な人。物語的な誘導が心地よい人 5〜15分 ふつう。イメージが浮かびにくい人には向かないことも

表からも分かるとおり、「やりやすさ」と「向いている場面」は方法ごとに違います。次章からは、この中でも手順が具体的で始めやすい漸進的筋弛緩法を中心に見ていきます。

漸進的筋弛緩法(PMR)のやり方

漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation:PMR)は、体の各部位に意図的に力を入れてから一気に抜くことで、力の入った状態と抜けた状態の差を自覚し、筋肉の緊張をゆるめていく方法です。1920年代にジェイコブソンが体系化し、現在まで広く研究・実践されている、リラクセーション法の中でも手順が明確な技法とされています[1]。

基本の姿勢と考え方

PMRは椅子に深く腰かけるか、仰向けに横になって行います。まず数回、ゆっくりと呼吸を整えてから始めます。力を入れる強さは「痛みを感じる手前の7〜8割程度」を目安にし、こわばりや痛みのある部位は無理に力を入れないでください。

部位の順番と力の入れ方・抜き方

手順は毎回同じ順番で、体の末端から中心、あるいは顔から足へと一方向に進めるのが基本です。1つの部位につき、次の流れを繰り返します。

部位の順番の一例は、①両手を握りこぶしにする→②腕全体に力を入れる→③肩をすくめる→④顔をすぼめる→⑤首を軽く後ろに倒す→⑥胸とお腹に力を入れる→⑦お尻に力を入れる→⑧太ももに力を入れる→⑨つま先を反らす、という流れです。全身で10〜20分、時間が取れない場合は上半身だけの短縮版でも5分程度で行えます。

一連の流れをつかむコツ

最初の数回は手順を覚えることに気を取られがちですが、それ自体は問題ではありません。慣れてくると、力を入れた瞬間と抜いた瞬間の感覚の差に自然と意識が向くようになるとされています。就寝前や、緊張する場面の前後など、決まったタイミングに組み込むと習慣化しやすくなります。

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自律訓練法とその注意点

自律訓練法は、「腕が重い」「腕が温かい」といった決まった言葉(公式)を心の中で繰り返しながら、体の感覚に意識を向けていく技法です。ドイツの精神科医シュルツが体系化したもので、標準練習は「重感→温感→心臓調整→呼吸調整→腹部温感→額の涼感」という6つの公式を段階的に積み重ねる構成になっています[3]。1回のセッションは15〜22分程度で、効果を実感するまでには数週間から数か月かけて段階的に習得していくことが前提とされています。

自律訓練法には、他の方法にはない特有の注意点があります。訓練を進める過程で「自律性解放」と呼ばれる反応が起こることがあり、不安の高まりや、体の一部が意図せず動く、感情がこみ上げるといった経験を伴う場合があるとされています[4]。こうした反応への対応を含め、標準練習より進んだ技法では適切な訓練と治療過程の監督が必要とされており[3]、自己流の独学よりも、指導者のもとで段階を踏んで学ぶことが望ましいと考えられています。また、統合失調症など一部の精神疾患がある場合は、症状の経過によっては向かないことがあるとも指摘されており[3]、精神科や心療内科に通院中の方は、自己判断で始める前に主治医に相談してください。

呼吸法・ボディスキャン・イメージ法の要点

残る3つの方法は、それぞれ独立した記事で詳しく扱っています。ここでは選ぶ際の判断材料になる要点だけを整理します。

呼吸法は、自分のペースで速さや深さを変えられる数少ない自律神経への入り口とされ、道具も場所も要らず、すきま時間にその場で試せる手軽さが特徴です。4-7-8呼吸やボックス呼吸など具体的なやり方は、自律神経を整える呼吸法で解説しています。

ボディスキャンは、頭からつま先まで体の各部位に順番に意識を向け、そこで感じたことをそのまま観察していく方法です。横になれる環境が必要な代わりに、体の感覚をじっくり観察する練習として、マインドフルネスの土台にもなるとされています。姿勢やつまずきやすいポイントは、ボディスキャン瞑想にまとめています。

イメージ法(誘導イメージ)は、波打ち際や静かな森など、心地よく感じる情景を頭の中に思い描き、その場にいる感覚を味わうことで心身の緊張をゆるめる方法です。視覚的な想像が得意な人には取り組みやすい一方、イメージが浮かびにくいと感じる人には、他の方法の方が合いやすいこともあります。

自分に合う方法の選び方と「うまくできない」への向き合い方

方法を選ぶ基準は、効果の大小よりも「続けやすいかどうか」だと考えられています。次のうち、当てはまるものから選んでみてください。

試してみて「うまく力が抜けない」「イメージが浮かばない」と感じても、それは失敗ではありません。むしろ、リラックスしようと意識すること自体が緊張を生み、かえって不安が高まる現象は、リラクセーション誘発性不安として1980年代から研究されている、一定数の人に起こりうる反応です[5]。「自分には向いていない」と決めつける前に、別の方法に切り替えてみる、時間を短くしてみる、といった調整を試す価値があります。

よくある質問

どのリラクセーション法から始めればいいですか

迷う場合は、手順が明確で短時間から試せる漸進的筋弛緩法か呼吸法から始めることをおすすめします。体感が得やすく、続けやすいかどうかを判断しやすいためです。

複数の方法を組み合わせてもいいですか

組み合わせること自体は問題ありませんが、研究では単一の方法をていねいに行う方が、複数を組み合わせるより効果が高い傾向も報告されています[2]。まずは1つを選び、慣れてから別の方法を試す進め方が現実的です。

毎日やらないと意味がありませんか

毎日の実践が理想とされていますが、系統的レビューでは実施頻度や1回あたりの時間の長短が、結果に大きな差をもたらさなかったという報告もあります[1]。週に数回でも、続けやすいペースで取り組むことが大切です。

やってみても全然リラックスできません。向いていないのでしょうか

向いていないと決めつける必要はありません。リラックスしようと意識するほど緊張してしまう反応は珍しくないとされており[5]、うまくいかない体験そのものが、その方法が合わないサインとは限りません。時間や姿勢を変える、別の方法に切り替えるなど、調整を試してみてください。

不安障害やうつ病の治療の代わりになりますか

なりません。リラクセーション法はセルフケアの一つであり、不安障害やうつ病が疑われる場合の診断・治療の代わりにはならないとされています。強い不安や気分の落ち込みが続く場合は、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

まとめ

リラクセーション法は、体からアプローチする漸進的筋弛緩法・呼吸法と、心からアプローチする自律訓練法・ボディスキャン・イメージ法に大きく分けられ、それぞれ向き不向きや所要時間が異なります。中でも漸進的筋弛緩法は手順が明確で始めやすく、部位の順番どおりに力を入れて抜くことを繰り返すだけで取り組めます。自律訓練法は自律性解放という特有の反応があるため、独学より指導者のもとで学ぶことが望ましいとされています。効果量は研究によって幅があり、必ず効くと言い切れるものではないため、「うまくできない」と感じても自分を責めず、合う方法を探すつもりで試してみてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。不安障害やうつ病が疑われる、または強いつらさが続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。ひとりで抱え込めないときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、厚生労働省「まもろうよ こころ」の相談窓口一覧も利用できます。

参考文献

編集:Wellstate編集部/監修:準備中