「まだ40代なのに、なんとなく体が重い」「イライラや落ち込みの波が大きくなった気がする」「月経周期が以前より乱れてきた」。30代後半から40代にかけて、こうした変化を感じ始める方は少なくありません。結論から言えば、この時期の不調は「プレ更年期」という言葉で語られることが多いものの、これは正式な医学用語ではなく、実際にはエストロゲンのゆらぎ以外にも見逃せない原因が隠れていることがあります。この記事では、「プレ更年期」という言葉の位置づけから、体の中で実際に起きていること、そして年齢のせいだと思い込む前に確認したい他の原因までを、以下のポイントを中心に解説します。

ぜひ最後までお読みください。

「プレ更年期」という言葉の正体——医学用語ではない

メディアが使い始めた言葉であり、正式な医学用語ではありません

「プレ更年期」は、雑誌やウェブメディアが使い始めた表現で、婦人科領域で正式に定義された医学用語ではありません。似た体験を指す言葉として便利に使われていますが、診断名として病院で告げられることは基本的にないと考えておくとよいでしょう。言葉が先にあるために、「自分の不調は全部これのせいだ」と早合点してしまいやすい点には注意が必要です。

更年期の医学的な定義と、30代・40代がその「前」にあたる理由

日本産科婦人科学会は、更年期を「閉経の前後5年間、あわせて10年間」と定義しています。日本人女性の平均閉経年齢はおよそ50歳前後とされているため、医学的な更年期はおおむね45歳から55歳の時期にあたります。つまり30代後半から40代前半は、多くの場合まだこの定義上の更年期には入っていない時期です。「プレ更年期」という言葉は、この空白の期間に生じる体調のゆらぎを指すために、便宜的に広まったと考えられます。

「プレ更年期」という言葉があること自体は、体の変化に不調の名前をつけて安心したい気持ちの表れです。ただし、その名前が受診を遅らせる理由になってしまっては本末転倒です。

体の中で実際に起きていること——エストロゲンのゆらぎと月経周期の変化

「プレ更年期」という言葉自体は医学用語ではありませんが、この年代の体に変化が起きていないわけではありません。ここでは、実際に何が起きているのかを整理します。

卵巣機能のゆらぎは、閉経のずっと前から始まっています

卵巣の中にある卵子のもとになる細胞(卵胞)の数は、30代から加速度的に減少していくとされています。この過程で排卵が起こりにくい周期が混ざるようになり、エストロゲンの分泌量も一定ではなく、月によって多かったり少なかったりする「ゆらぎ」が生じやすくなります。閉経という一つの出来事の前に、こうした緩やかな変化の期間が数年単位で続くと理解しておくと、体調の波を必要以上に不安に感じずに済みます。

月経周期・経血量の変化は、体からの分かりやすいサインです

月経周期が7日以上のずれを繰り返すようになる状態は、閉経移行期の初期に見られる変化として知られています。周期が短くなる、経血量が急に増える・減る、間隔が空くようになるといった変化は、ホルモンバランスが動き始めているサインの一つです。基礎体温や月経アプリで周期を記録しておくと、変化に気づきやすくなり、後で医療機関に相談する際にも役立ちます。

「年齢のせい」にする前に確認したい、更年期以外の原因

ここが本記事で最もお伝えしたいポイントです。30代・40代の不調は、女性ホルモンのゆらぎだけで説明できるとは限りません。似た症状を引き起こす別の要因が隠れていることがあり、これらの多くは検査で分かり、治療につなげられます。年齢のせいだと思い込んで受診を遅らせることのほうが、実は大きな損失になり得ます。

原因 重なりやすい症状 分かる主な検査
甲状腺機能異常 倦怠感、むくみ、抜け毛、気分の落ち込み、月経不順 血液検査(TSH・fT4など)
鉄欠乏・隠れ貧血 疲れやすさ、動悸、息切れ、集中力の低下 血液検査(ヘモグロビン・フェリチン)
睡眠負債 日中の眠気、意欲低下、イライラ、記憶力の低下 睡眠時間・睡眠の質の記録
うつ・不安障害 気分の落ち込みが2週間以上続く、興味関心の低下、食欲・睡眠の変化 問診によるスクリーニング

甲状腺機能異常

甲状腺機能低下症は、倦怠感や気分の落ち込み、むくみ、月経不順など、更年期の不調と重なる症状が多いことで知られています。40歳以降の女性に比較的多く見られる病気で、更年期外来を受診した方の中に甲状腺機能の異常が見つかるケースも報告されています。血液検査でTSHや甲状腺ホルモンの値を調べれば分かるため、症状だけで自己判断しないことが大切です。

鉄欠乏・隠れ貧血

月経周期が乱れる時期には、経血量が増えて鉄を失いやすくなることがあります。ヘモグロビンの値が基準内でも、体に蓄えられている貯蔵鉄(フェリチン)が少ない「隠れ貧血」の状態では、疲れやすさや集中力の低下が起こりやすいとされています。健康診断の「貧血なし」という結果だけで安心せず、気になる場合はフェリチンの値まで確認するとよいでしょう。鉄不足について詳しくは鉄不足のサインと鉄サプリの選び方でも整理しています。

睡眠負債

睡眠不足は、借金のように少しずつ積み重なって心身に影響を及ぼすと考えられています。仕事や家事、育児などで慢性的に睡眠時間が短くなっていると、本人が自覚しないまま意欲低下や気分の不安定さ、記憶力の低下といった不調につながることがあります。ホルモンのゆらぎと睡眠不足が重なると、不調がより強く感じられやすくなる点にも注意が必要です。

うつ・不安障害

気分の落ち込みや意欲低下が2週間以上続く場合は、更年期の不調というより、うつ病や不安障害の可能性も視野に入れる必要があります。月経前症候群(PMS)のように月経周期と連動して気分が変動するケースも含め、症状のパターンを自己判断だけで見極めるのは難しいものです。PMSとうまく付き合う完全ガイドも参考にしながら、続く場合は心療内科や精神科、婦人科での相談を検討してください。

「これは更年期なのか、それとも別の原因なのか」を自分だけで判断するのは簡単ではありません。気になる方は、無料のセルフチェックで、いま整えたいテーマを確認してみてください。

不調を記録して整理する——セルフチェックの視点

受診する・しないにかかわらず、まずは自分の状態を記録して整理することが出発点になります。次のような項目をメモしておくと、医療機関を受診する際にも状況を伝えやすくなります。

今日からできる土台づくり

原因の切り分けと並行して、生活の土台を整えることも不調のやわらげにつながると考えられています。無理のない範囲で、できそうなものから取り入れてみてください。

これらはあくまで土台づくりであり、症状そのものを治療するものではありません。生活を整えても不調が続く場合は、次章の受診の目安を参考にしてください。

受診の目安と何科に相談すればいいか

次のような場合は、自己判断で「年齢のせい」と片づけず、医療機関への相談を検討してください。月経周期が大きく乱れている、または経血量が急に変化した場合は婦人科が適しています。倦怠感やむくみ、気分の落ち込みが強く、月経周期との関連がはっきりしない場合は、内科で甲状腺機能や血液検査を相談するのも一つの方法です。気分の落ち込みや意欲低下が2週間以上続き、日常生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科への相談も選択肢に入ります。どこに行けばよいか迷う場合は、まずかかりつけの婦人科や内科に相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらう流れでも問題ありません。

よくある質問

「プレ更年期」は病院で診断されますか?

「プレ更年期」という診断名は基本的に使われません。婦人科では、月経周期の乱れやホルモン値、症状の内容から総合的に状態を判断し、必要に応じて更年期障害や他の病気の可能性を検討します。

血液検査を受ければ何が分かりますか?

甲状腺ホルモン(TSH・fT4など)、貯蔵鉄の指標であるフェリチン、女性ホルモンの値などが分かります。健康診断の項目だけでは分からない場合もあるため、気になる症状がある旨を伝えて追加の検査を相談するとよいでしょう。

症状が軽いうちから受診してもいいのでしょうか。

症状が軽い段階での相談も問題ありません。早めに原因を切り分けておくことで、不調が強くなる前に対処しやすくなると考えられています。「これくらいで受診していいのか」と迷う必要はありません。

サプリメントで対策してもよいですか?

鉄などの栄養素はまず食事から補うことが基本です。サプリメントを使う場合も、自己判断で高用量をとり続けるのではなく、血液検査の結果を踏まえたうえで、必要に応じて医師や薬剤師に相談してください。

更年期の記事とは何が違うのですか?

本記事は、医学的な更年期(閉経前後5年間)に入る前の30代後半〜40代の不調と、その鑑別に焦点を当てています。更年期そのものの症状やセルフケアについては、更年期の記事で詳しく解説しています。

まとめ

「プレ更年期」は医学用語ではなく、30代後半〜40代に感じる不調をまとめて呼ぶために広まった言葉です。この時期にはエストロゲンのゆらぎや月経周期の変化が実際に起こり得る一方で、甲状腺機能異常や鉄欠乏、睡眠負債、うつなど、検査で分かり治療につながる原因が隠れていることも少なくありません。不調をすべて年齢のせいにしてしまうと、対処できるはずの原因を見逃し、受診が遅れてしまう可能性があります。強い不調や長く続く変化がある場合は、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。不調が強い・長く続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

参考文献

編集:Wellstate編集部/監修:準備中