「秋から冬になると、なぜか気分が重くなる」「朝起きるのがつらく、何をするにも億劫に感じる」。そんな変化を毎年繰り返し感じている方は、少なくないのではないでしょうか。結論から言えば、冬に気分が落ちるのは意志の弱さではなく、日照時間の変化に体が敏感に反応するために起こりやすい、自然な反応のひとつと考えられています。

本記事では、季節で気分が変わることについて以下のポイントを中心に解説します。

ぜひ最後までお読みください。

冬に気分が沈むのは「気のせい」ではありません

季節によって気分が変わるのは、多くの人に共通する自然な反応と考えられています。うつ病についての専門情報でも、気分の落ち込みは感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じている状態として説明されており、性格や気合いの問題として片づけられるものではないとされています(参考文献1)。

とくに日照時間が短くなる季節は、体内時計や気分の調整にかかわるホルモンの分泌リズムが崩れやすいと考えられています。朝の光を浴びる量が減ることで体内時計の同調がずれやすくなり、気分や意欲、睡眠の質に影響が及びやすいという見方が一般的です。

冬に気分が落ちるのは、意志の弱さではなく、光の量に敏感に反応する体の仕組みによるものと考えられています。

「毎年冬になると調子を崩す自分は弱いのではないか」と感じてしまう方もいるかもしれません。ですが、それは仕組みの問題であり、まず自分を責めないことが大切な出発点になります。次章から、冬に気分が沈みやすくなる具体的な要因を整理していきます。

なぜ冬に気分が沈みやすいのか

冬の気分の落ち込みは、光だけで説明できるものではありません。気温や活動量の変化、年末年始特有の社会的な負担など、複数の要因が重なって起こると考えられています。

要因 具体的な変化 気分への影響
日照時間の短縮 朝の光を浴びる時間が減り、日没も早まる 体内時計のずれ、意欲や気分の低下につながりやすいとされる
気温の低下・活動量の減少 外出や運動の機会が減り、体を動かす時間が短くなる 血流の停滞や疲労感、気分の重さにつながりやすい
年末年始の社会的な負担 仕事の締め、家族行事、人付き合いの増加 心身の余裕が減り、気分の落ち込みを感じやすくなる

このように、冬の気分の変化は光・気温や活動量・社会的な要因が絡み合って生じると考えられています。「日照時間さえ確保すればすべて解決する」というものではなく、複数の角度から自分の状態を見直すことが大切です。

日本の中でも違う、地域による日照時間の差

日本は南北に長く、地域によって冬の日照時間には差があります。日本海側や北日本では曇りや降雪の日が多くなりやすく、太平洋側に比べて冬の日照時間が短くなる傾向があるとされています。

季節性のうつ病に関する海外の臨床レビューでも、より高緯度の地域に住んでいることが発症のリスク要因のひとつとして挙げられています(参考文献2)。日本国内でも、住んでいる地域によって「冬になると調子を崩しやすい」という実感の強さが異なる可能性があります。自分の地域の冬の気候を振り返ってみることも、状態を理解する手がかりになります。

光以外にできること:今日からの実践リスト

光の量を意識することに加えて、生活の中で調整できる要素は複数あります。次のうち、できそうなものから取り入れてみてください。

「自分の状態がよく分からない」という方は、無料のセルフチェックで、いま整えたいテーマを確認できます。

これらは気分の落ち込みを完全に防ぐものではありませんが、体調の土台を整える助けになると考えられています。無理なく、続けられる範囲から始めてみてください。

高照度光療法とは?向き合い方と注意点

高照度光療法には、一定の科学的な裏付けがあります

高照度光療法は、季節性のうつ病に対する効果を支持する研究が複数あります。19件のランダム化比較試験を対象としたメタ分析では、光療法がプラセボと比べて気分の改善に一定の効果を示したと報告されています。ただし効果の大きさはそれほど大きくなく、研究の質にもばらつきがあると指摘されています(参考文献3)。国内の専門情報でも、高照度光療法はうつ病に対する治療の選択肢のひとつとして紹介されています(参考文献1)。

自己判断で始める前に、医師に相談することが大切です

高照度光療法は、機器の照度や使用時間、使うタイミングによって体感や適合性が変わります。海外の臨床レビューでは2,500〜10,000ルクスの光を1日30〜60分程度、起床後の決まった時間に浴びる方法が紹介されていますが、これは医療機関での指導を前提とした情報です(参考文献2)。目の疾患がある方や、目を光に敏感にする薬を服用している方は、開始前に眼科での確認が望ましいとされています(参考文献2)。自己判断で市販の機器を選び、照度や時間を決めて使い始めるのではなく、まずは医師に相談することをおすすめします。特定の製品を選ぶ判断も、医療機関に相談したうえで行ってください。

双極性障害がある方は、とくに注意が必要です

光療法は、双極性障害のある方において、躁状態やそれに近い状態を引き起こす可能性が報告されています。海外では、光を用いた治療の後に躁状態が生じた症例も報告されており、注意が必要な人がいることが分かっています(参考文献4)。双極性障害では、うつ状態と躁状態で治療の考え方が異なるとされており(参考文献5)、気分の波に心当たりがある方は、光療法を始める前に必ず医師に相談してください。

受診を考える目安(季節性のうつ病について)

季節性のうつ病(季節性感情障害)は、医学的な診断名です。ここでの目安は自己診断のためのチェックリストではなく、受診を考えるきっかけとして参考にしてください。

海外の臨床情報では、同じ季節(多くは秋から冬)に気分の落ち込みが起こり、それ以外の季節にはほぼ回復する状態が2年以上続くことが、診断を検討するうえでの目安のひとつとされています(参考文献2)。加えて、気分の落ち込みによって仕事や家事、人付き合いに支障が出ている場合も、受診を考えるサインになります。

「これくらいで受診していいのか」とためらう必要はありません。心の不調を相談できる窓口として、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、厚生労働省の特設サイト「まもろうよ こころ」があります(参考文献6)。まずは電話やサイトから、気軽に相談してみてください。

よくある質問

冬季うつと、ふつうの気分の波はどう違いますか?

毎年同じ季節に気分の落ち込みが繰り返され、それ以外の季節にはほぼ回復する状態が続く場合、季節性のうつ病が考えられます。診断は医師が行うものであり、自己判断はおすすめできません。

光を浴びれば、気分の落ち込みは必ず改善しますか?

光療法には一定の効果を支持する研究がありますが、効果には個人差があり、すべての人に同じように作用するとは限りません。気温や活動量、社会的な負担など、光以外の要因も影響すると考えられています。

市販の光療法用ライトを自分で選んで使ってもよいですか?

照度や使用時間の選び方は、目の状態や体質によって注意が必要な場合があります。自己判断で始めるのではなく、まずは医師に相談することをおすすめします。

双極性障害がある場合、光療法は受けられませんか?

光療法によって躁状態に近い状態が引き起こされる可能性が報告されています。双極性障害がある方や気分の波に心当たりがある方は、必ず事前に医師へ相談してください。

冬以外の季節でも、気分が落ち込むことはありますか?

季節性のうつ病は主に秋から冬に多いとされていますが、まれに夏に不調を感じる方もいます。時期にかかわらず、気分の落ち込みが続く場合は医療機関への相談を検討してください。

何科を受診すればよいですか?

まずは精神科や心療内科への相談が目安になります。かかりつけ医がいる場合は、そこで紹介してもらう方法もあります。

まとめ

冬に気分が沈むのは、光の量の変化に体が反応しやすいために起こる自然な反応のひとつと考えられており、意志の弱さや性格の問題ではありません。気温や活動量、年末年始の社会的な負担など、光以外の要因も重なって気分に影響すると考えられています。高照度光療法には一定の効果を支持する研究がある一方、機器選びや使用方法、目の疾患や双極性障害がある場合の注意点もあります。気分の落ち込みが同じ季節に繰り返され、生活に支障が出ている場合は、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。気分の落ち込みが続く・つらい場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

参考文献

編集:Wellstate編集部/監修:準備中