「SNSを見た後、なぜか気分が沈む」「でも、やめたら友人や趣味の仲間とのつながりが切れてしまう気がする」。こうした相反する感覚を抱いたことがある方は少なくないはずです。結論から言えば、SNSが健康に「良い」か「悪い」かは一概には言えません。研究データを見ても効果量は総じて小さく、能動的な交流か受動的な閲覧か、誰のために使うかによって向きが変わるというのが、現時点での研究の到達点です。
本記事では、SNSと健康の関係について以下のポイントを中心に解説します。
- 能動的な交流と受動的な閲覧では、心への影響が異なると考えられていること
- 「SNS利用が多い人ほど気分が沈みやすい」というデータが、因果関係を意味しないこと
- 対面のつながりが得にくい人にとって、SNSが大切な拠り所になり得ること
ぜひ最後までお読みください。
SNSは健康に良いのか悪いのか、まず押さえたい結論
SNSと健康の関係には、単純な白黒の答えがないというのが結論です。2019年に発表された大規模研究では、35万人以上のデータをスペシフィケーション・カーブ分析という手法で解析し、デジタル技術の利用が思春期の心の健康(ウェルビーイング)に与える影響は「小さいがマイナス」であり、説明できる分散はわずか0.4%にとどまると報告されています。研究チームは、この効果の大きさは政策変更を正当化するほど大きくないとも述べています。
一方で、2019年から2021年にかけて公表された27本のレビュー(メタ分析9本、システマティックレビュー9本、ナラティブレビュー9本)を整理した研究では、SNS利用時間・能動的利用・受動的利用のいずれについても、レビューごとに結論が一致していないことが指摘されています。つまり「SNSは総じて有害」とも「総じて無害」とも言い切れる段階にはなく、条件によって結果が割れるのが実情です。
SNSが心に与える影響は、良し悪しという一本の線ではなく、「誰が」「何のために」「どう使うか」で向きが変わると考えられています。
この「割れ方」には一定のパターンがあります。次の章から、その代表的な論点を順に見ていきます。
能動的利用と受動的利用で、心への影響は変わる
SNSの影響を考えるうえで重要なのが、能動的利用と受動的利用の区別です。コメントやメッセージのやり取りなど「交流を伴う使い方」と、タイムラインを眺めるだけの「受動的な使い方」とでは、心への影響が異なると考えられています。
能動的利用とは
能動的利用とは、投稿やコメント、メッセージのやり取りなど、他者との直接的なコミュニケーションを伴う使い方です。近況を報告し合ったり、共通の趣味について会話したりする行為が当てはまります。
受動的利用とは
受動的利用とは、自分から発信・交流せず、他者の投稿を眺めるだけの使い方です。実験と日常記録の両方を用いた研究では、受動的なFacebook利用が嫉妬心を高めることを介して、その後の感情的な幸福感を低下させることが報告されています。この関連は、能動的利用や対面での交流の量を考慮しても残っていたとされています。
| 利用スタイル | 具体例 | 報告されている傾向 |
|---|---|---|
| 能動的利用 | 近況のやり取り、コメント返信、グループでの会話 | つながりの実感や気分の維持につながりやすいと考えられている |
| 受動的利用 | タイムラインを眺める、ストーリーを見るだけ | 嫉妬などを介して気分が沈みやすいと報告されている |
この表はあくまで傾向であり、個人差があります。同じ「眺める」行為でも、応援したい相手の発信を見て前向きな気持ちになる場合もあり、一律には決められません。
「みんな充実している」に見える、上方比較の罠
SNSで気分が沈む背景として繰り返し指摘されるのが、上方比較(アップワード・コンパリズン)です。自分より恵まれている、充実していると感じる他者と自分を比べる心の動きを指します。
上方比較とは何か
上方比較とは、自分よりも優れている、幸せそうだと感じる相手と自分を無意識に比べる心理現象です。もともとは対面の人間関係でも起こる普遍的な心の働きですが、SNSではその頻度と対象の数が格段に増える点が特徴です。
なぜSNSで起きやすいのか
SNSでは、他者の生活の「良い瞬間」だけが凝縮されて流れてくるため、上方比較が起きやすいと考えられています。モバイルSNSでの上方比較と抑うつ傾向の関連を検討した研究では、上方比較が嫉妬を介して抑うつ症状と結びつくことが報告されています。また、理想化された画像への上方比較が、若い女性の外見に対する満足度の低下と関連するという報告もあります。ただし、こうした研究の多くは特定の場面や集団を対象にしたものであり、すべての利用者に一律に当てはまるとは限りません。
気になる方は、無料のセルフチェックで「いま整えたいテーマ」を確認できます。
相関と因果を混同しない
SNSと健康に関するデータを読むときに欠かせないのが、相関と因果の区別です。「SNS利用が多い人ほど気分が沈みやすい」というデータは、SNSが気分を沈ませていることを直接には証明しません。
「使うほど気分が沈む」は因果を意味しない
この種の相関は、逆方向の因果、つまり「気分が沈んでいる人ほどSNSに向かいやすい」可能性も含みます。孤独感や不調を抱えた人が、気晴らしや情報収集の手段としてSNSの利用時間を増やすケースは十分に考えられ、原因と結果を取り違えると対策の方向を誤ります。
大規模な再解析が示したこと
先述の35万人規模の再解析研究は、こうした交絡要因の影響を減らすために、あらゆる妥当な分析パターンを網羅的に試すスペシフィケーション・カーブ分析という手法を用いています。その結果として得られた「効果量はごく小さい」という結論は、単発の相関研究よりも頑健性が高いと位置づけられています。一方で、同じ研究チームによる別の分析では、10年間の推移を見ると、デジタル技術全般の利用とうつ症状の関連はむしろ弱まっていたのに対し、SNS利用と感情面の問題との関連はやや強まっていたという、一様ではない結果も報告されています。
子ども・思春期については、結論を急がない
子どもや思春期のSNS利用については、研究者の間でも意見が分かれており、断定できる段階にはありません。発達段階や学校生活、友人関係のあり方など考慮すべき要因が多く、大人と同じ物差しで語ることはできないためです。保護者は一律の禁止や放任ではなく、利用状況を対話の中で把握し、必要に応じて学校や専門家に相談する姿勢が大切と考えられています。
SNSが「命綱」になっている人もいる
SNSをめぐる議論は「距離を置くべきだ」という論調に偏りがちですが、それだけでは実情を捉えきれません。対面のつながりを得にくい状況にある人にとって、SNSが数少ない拠り所になっている場合があります。
対面のつながりが得にくい場面
難病や希少疾患を抱える人、性的マイノリティの当事者、育児や介護で外出が難しい人、身近に同じ立場の人が少ない地方在住者などにとって、SNSは同じ経験を持つ人と出会える貴重な場になり得ます。地方在住の性的マイノリティの若年成人を対象にした研究では、都市部では利用頻度の高さが物質使用の増加と関連していた一方、地方部ではオンラインでのコミュニティとのつながりがメンタルヘルス症状や物質使用の少なさと関連していたと報告されています。慢性腎臓病の介護者を対象にしたオンラインフォーラムの調査でも、オンラインでの社会的支援が介護者の生活の質を支え得ることが示唆されています。
対面の関係を置き換えないための工夫
SNSでのつながりは、対面の関係を完全に代替するものではなく、補い合う関係にあると考えるのが現実的です。SNSでの交流時間が増えるほど、睡眠時間や対面での会話に充てる時間が削られるのではないかという「置き換え仮説」も議論されています。実際にどちらが削られているかは個人差が大きいため、自分の生活の中で睡眠や対面の時間がSNSに押し出されていないかを、時々振り返る習慣が助けになると考えられています。
使い方の指針、誰と・何のために・どのくらい
ここまでの内容を踏まえると、大切なのは「やめるかどうか」ではなく、誰と・何のために・どのくらい使うかという使い分けです。次のうち、できそうなものから取り入れてみてください。
- 交流を主目的にする:眺めるだけでなく、コメントやメッセージなど双方向のやり取りを意識します。
- 時間帯を区切る:就寝前や起床直後の惰性的なスクロールを避け、通知の頻度を見直します。
- 比較を誘発しやすいアカウントと距離を置く:見た後に気分が沈むアカウントは、ミュートやフォロー整理の対象にします。
- 複数のつながりの窓口を持つ:SNSだけに依存せず、電話や対面など別の連絡手段も並行して保ちます。
- 自分の反応を記録する:利用後に気分が上がったか沈んだかを振り返り、自分に合う使い方を探ります。
強い孤立感や気分の落ち込みが続く場合は、SNSの使い方だけで抱え込まず、家族や信頼できる人、必要であれば医療機関や相談窓口に早めに相談することが大切です。
よくある質問
SNSをやめれば気分は良くなりますか?
一律には言えません。受動的な利用を減らすことは助けになる場合がありますが、SNSが数少ない交流の窓口になっている人にとっては、やめることでかえって孤立感が強まる可能性もあります。
子どものSNS利用はどのくらい制限すべきですか?
一律の時間や年齢の基準は定まっていません。研究者の間でも見解が分かれているため、家庭内での対話を通じて利用実態を把握し、気になる点があれば学校や専門家に相談することが勧められます。
フォロワー数やいいねの数は気にしなくていいですか?
気にしすぎない工夫は助けになると考えられています。数字への注目が強まるほど上方比較が起きやすくなるため、通知をオフにするなど数字が目に入りにくい設定を試す方法があります。
対面で会う時間が取れない場合、SNSだけでも良いですか?
状況によっては十分な役割を果たすと考えられています。特に対面の機会が物理的に得にくい人にとって、SNSは重要なつながりの手段になり得ますが、可能であれば電話や短時間の対面など別の接点も併用すると安心です。
SNS依存かどうかはどう判断すればいいですか?
利用時間の長さだけでなく、生活や睡眠、仕事や学業への支障があるかどうかが目安になります。自己判断が難しい場合は、無理をせず医療機関や相談窓口に相談することをおすすめします。
まとめ
SNSと健康の関係は、良い・悪いの二択では語れません。効果量は全体として小さく、能動的利用か受動的利用か、上方比較を誘発しやすい使い方かどうか、対面のつながりをどれだけ持っているかによって、影響の向きは変わると考えられています。相関と因果を混同せず、対面のつながりが得にくい人にとってSNSが大切な拠り所になり得ることも踏まえたうえで、自分に合った使い方を探ることが現実的な一歩です。気分の落ち込みや孤立感が強く続く場合は、自己判断だけに頼らず医療機関に相談してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。気分の落ち込みや孤立感が続く・つらい場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
あわせて読みたい
参考文献
- Orben A, Przybylski AK. "The association between adolescent well-being and digital technology use." Nature Human Behaviour, 2019(PubMed)
- Vuorre M, Orben A, Przybylski AK. "There is no evidence that associations between adolescents' digital technology engagement and mental health problems have increased." Clinical Psychological Science, 2021(PubMed)
- Verduyn P, et al. "Passive Facebook usage undermines affective well-being: Experimental and longitudinal evidence." Journal of Experimental Psychology: General, 2015(PubMed)
- Valkenburg PM. "Social media use and well-being: What we know and what we need to know." Current Opinion in Psychology, 2022(PubMed)
- "Upward social comparison on mobile social media and depression." Journal of Affective Disorders, 2020(PubMed)
- Vogel EA, et al. "Social media use and health outcomes as moderated by rurality among sexual minority young adults." American Journal on Addictions, 2026(PubMed)
- "Using an international online forum to explore perspectives of caregivers of patients with chronic kidney disease." Journal of Nephrology, 2022(PubMed)
編集:Wellstate編集部/監修:準備中
