「ストレスチェックの結果、会社に知られてしまうのでは」「高ストレスと出たら、評価に響くのでは」。毎年届くこの検査を、こうした不安とともに受けている方は少なくありません。結論から言えば、ストレスチェックの結果は労働者本人の同意なしに事業者へ提供されることはなく、受けなかったことや面接指導を申し出たことを理由にした不利益な取扱いも、法令や指針によって禁止されています。

本記事では、ストレスチェック制度について以下のポイントを中心に解説します。

ぜひ最後までお読みください。

ストレスチェックとは何か(制度の目的と対象事業場)

ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、労働者のストレスの状況を定期的に検査する制度です。常時50人以上の労働者を使用する事業場では年1回の実施が法的な義務であり、50人未満の事業場は当面のあいだ努力義務とされています。目的はうつ病などの発見や診断ではなく、労働者自身が自分のストレスに気づき、働きやすい職場づくりにつなげる「一次予防」だとされています。

50人未満の事業場についても、法令・指針に沿って実施することが求められており、実施費用の助成制度が用意されています。一方で、労働基準監督署への実施結果の報告義務は50人以上の事業場に限られる点が、規模による大きな違いです。この報告義務は労働安全衛生規則第52条の21に定められています。

結果が会社に伝わるのは、労働者本人が同意した場合だけです。

この「同意がなければ伝わらない」という原則は、制度の根幹にあたります。次の章で、労働者が最も気にする不安に、一次情報をもとに正面から答えます。

結果は会社に知られる? 労働者の不安に一次情報で答える

ストレスチェックへの抵抗感の多くは、「結果が人事や上司に伝わるのではないか」という不安から来ていると考えられます。ここでは、厚生労働省の指針・Q&Aに基づいて、その不安に一つずつ答えます。

本人の同意がなければ、事業者は結果を見られません

結論として、ストレスチェックの結果は、労働者本人が同意しない限り事業者に提供されません。数値による評価結果だけでなく、調査票の自由記述欄の内容についても、本人の同意なく事業者へ渡すことはできないとされています。同意を求めるタイミングも決まっており、検査の実施前ではなく、結果が出たあとに個別に確認する運用が原則です。

受けないこと・面接指導の申出は、不利益取扱いの対象になりません

結論として、ストレスチェックを受けないこと、あるいは高ストレスと判定されて面接指導を申し出たことを理由に、解雇・雇止め・不当な配置転換などの不利益な取扱いをすることは、指針で禁止されています。人事評価や賃金に直接反映させることも想定されていません。もし実際に不利益な扱いを受けたと感じた場合は、社内の相談窓口や、後述する外部の相談先に相談することが大切です。

実施者には、法律上の守秘義務があります

結論として、ストレスチェックを実施する医師・保健師・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師や精神保健福祉士などの実施者、および結果の入力作業などを担う実施事務従事者には、労働安全衛生法第105条に基づく守秘義務が課されています。補足的な面談を行う心理職なども同様に、面談内容が守秘義務の対象となる扱いです。この義務に違反すると罰則の対象になり得ます。

項目 常時50人以上の事業場 50人未満の事業場
実施義務 法的な義務 努力義務(法令・指針に沿った実施が求められる)
労働基準監督署への報告 義務あり 義務なし
実施費用の助成 原則対象外 国による助成制度あり
本人同意の原則・不利益取扱いの禁止 適用される 適用される

規模によって義務の重さは異なりますが、同意がなければ結果を渡さないことや、不利益取扱いを禁止する考え方は、事業場の規模にかかわらず共通しています。

実際の受け方:57項目調査票と当日の流れ

ストレスチェックの多くは、国が標準として示す「職業性ストレス簡易調査票」の57項目を使って実施されています。ここでは、調査票が何を測っているか、回答時に気をつけたい点を整理します。

調査票が測る3つの領域

調査票は、大きく分けて「職場のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」という3つの領域で構成されています。仕事の量や裁量の程度、身体の疲労感や気分の落ち込み、上司・同僚からの支援の有無などを、それぞれ複数の質問で確認する仕組みです。これらの領域が含まれていれば項目数を増減させることも認められており、実際には57項目より少ない簡略版を使う事業場もあります。

回答で気をつけたいこと

結論として、回答は率直な状態のまま行うことが、制度を意味あるものにする前提になります。「評価に響きそうだから、少し良く見せておこう」という回答は、本人の不調の早期発見という制度の目的を弱め、必要な面接指導や職場改善の機会を自分から遠ざけることにつながりかねません。同意がなければ結果は事業者に渡らないという前提を踏まえたうえで、実際の負担感を反映させることが勧められます。

「結局、答えても意味があるのか分からない」と感じる方は、無料のセルフチェックで、いまの自分の状態を別の角度からも確認してみると、気づきが得られることがあります。

高ストレスと判定されたら:面接指導という選択肢

調査票の結果、実施者が定めた基準をもとに「高ストレス者」と判定される場合があります。ここでは、その後に使える面接指導の仕組みを説明します。

面接指導の対象になる基準

結論として、面接指導の対象は「高ストレスであり、医師による面接指導が必要」と実施者が判定した労働者です。事業場ごとの数値基準は、衛生委員会での調査審議を経て個別に定められますが、実施マニュアルでは全国約20万人分のデータをもとに、高ストレス者がおおむね10%程度になるような数値基準の例が示されています。基準そのものは事業場によって幅があり、一律の目安ではない点に注意が必要です。

申し出から面接指導までの流れ

結論として、面接指導は労働者本人からの申し出があって初めて実施される仕組みです。高ストレスと判定されても、申し出なければ面接指導は行われません。申し出ると、医師による面接指導が行われ、その結果をもとに医師が事業者へ就業上の措置について意見を述べます。労働時間の短縮など具体的な措置を決める際は、あらかじめ本人の意見を聴き、十分な話し合いのうえで進めることが指針で求められています。申し出た時点で、面接指導に必要な範囲の情報は事業者に伝わることになりますが、それ以外の調査票の詳細まで一律に共有されるわけではありません。

「受けても意味がない」と感じる方への、結果の活かし方

「毎年同じような質問に答えているだけ」「結果を見ても、それで終わり」と感じる方も少なくないはずです。ここでは、受け身の検査で終わらせないための活かし方を紹介します。

できることから、少しずつ取り入れてみてください。

制度の限界と、ストレスチェックでは対応しきれないこと

結論として、ストレスチェックは万能な仕組みではありません。目的はあくまで一次予防であり、うつ病などの診断や治療の代わりにはならないとされています。心身の不調が続く場合は、結果の判定にかかわらず、医療機関への相談を検討することが大切です。

また、前述のとおり回答を実態より良く見せてしまう傾向があると、制度が本来の役割を果たしにくくなる限界も指摘されています。集団分析についても、10人未満の小さな集団では個人が特定されやすくなるため、同意なく結果を扱う際には慎重な取り扱いが必要とされています。

さらに、ハラスメントや恒常的な長時間労働が背景にある場合、ストレスチェックの結果を待つよりも、社内の相談窓口や「こころの耳」の相談窓口、労働基準監督署へ早めにつなぐことが優先されます。ストレスチェックは状態を可視化する入り口であり、問題そのものを解決する手段ではないと理解しておくことが役立ちます。

よくある質問

ストレスチェックを受けないと、何か不利益がありますか。

受けなかったことを理由にした不利益な取扱いは、指針で禁止されています。ただし、心身の状態を早期に把握する機会を自ら手放すことにはなるため、可能であれば受検することが勧められます。

高ストレスと判定されたら、必ず面接指導を受けなければなりませんか。

面接指導を受けるかどうかは本人の申し出によって決まり、義務ではありません。申し出なければ面接指導は行われず、そのこと自体を理由にした不利益な取扱いも禁止されています。

パートやアルバイトも対象になりますか。

契約期間が1年以上見込まれ、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上であるなど、一定の要件を満たす場合は対象に含まれます。詳細な要件は勤務先の実施状況によって異なるため、担当部署への確認が確実です。

結果は誰が見られて、どのくらい保存されますか。

結果を見られるのは、実施者や実施事務従事者など、あらかじめ役割を明確にされた担当者に限られます。事業者は、本人の同意を得て結果の提供を受けた場合、法令に基づき一定期間の保存を行う立場になります。

50人未満の会社で働いていますが、制度の対象外ですか。

対象外ではありません。50人未満の事業場は当面のあいだ努力義務とされていますが、実施する場合は50人以上の事業場と同じ法令・指針に沿って行われます。同意の原則や不利益取扱いの禁止も同様に適用されます。

まとめ

ストレスチェックは、労働者本人の同意なく結果が事業者に伝わることのない仕組みとして設計されており、受けないことや面接指導の申出を理由にした不利益な取扱いも禁止されています。57項目の調査票には率直に回答し、高ストレスと判定された場合は面接指導という選択肢を、経年での変化を見る材料として、また集団分析を職場改善の材料として活かしていくことが、この制度をただの年中行事で終わらせない使い方だと考えられます。心身の不調が続く場合や、ハラスメント・長時間労働が背景にある場合は、結果を待たず医療機関や相談窓口に相談することが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や個別の労務対応を保証するものではありません。心身の不調が続く・つらい場合は、自己判断せず医療機関や社内外の相談窓口にご相談ください。

参考文献

編集:Wellstate編集部/監修:準備中