「オフィスにいた頃より疲れやすい」「一日中座っていただけなのに、体が重い」「夜になっても頭が冴えず、寝つきが悪い」。在宅勤務が定着したことで、こうした違和感を抱える方が増えています。結論から言えば、その背景には「通勤という運動と光を失ったこと」と「仕事と生活の境界が消えたこと」という、二つの構造変化があると考えられています。本記事では、リモートワークの不調について以下のポイントを中心に解説します。
- 歩数や朝の光を浴びる機会が減ることで、体にどんな変化が起きるか
- オンとオフの切り替えがなくなることが、自律神経にどう負担をかけるか
- 住まいを大きく変えずに、今日から取り入れられる対策
ぜひ最後までお読みください。
リモートワークで起きやすい不調とその背景
在宅勤務で報告されやすい不調は多岐にわたります。肩こりや頭の重さ、目の奥の疲れ、寝つきの悪さ、日中の集中力の続かなさ、理由のはっきりしない気分の落ち込みなどです。これらは意志の弱さや自己管理の甘さの問題ではなく、働き方そのものが変わったことによる体の反応だと考えられています。
在宅勤務の不調の多くは、通勤という「強制的な運動と光」の喪失と、オンとオフの境界の喪失という、二つの構造変化から説明できると考えられています。
オフィス勤務では意識せずに得られていたものが、在宅勤務では自分で意図的に作らないと得られません。次章から、この二つの変化を順に見ていきます。
変化① 通勤が担っていた「運動」と「光」を失う
通勤は単なる移動ではなく、毎日決まった時間に体を動かし、屋外の光を浴びる機会でもありました。この二つを同時に失うことが、在宅勤務特有の不調につながると考えられています。
歩数は平均で3割近く減るというデータ
在宅勤務では、歩数が通勤時に比べて大きく減ることが報告されています。筑波大学とタニタヘルスリンクによる調査では、テレワーク導入前に1日平均約1万1,500歩だった歩数が、在宅勤務への切り替え後は約29%減少したとされています。人によっては7割減少し、1日2,700歩程度にとどまったケースもあったと報告されています。
身体活動量が少ない状態が続くと、血行が滞りやすくなり、肩こりや腰の張り、だるさにつながりやすいと考えられています。座りっぱなしの時間そのものが健康に及ぼす影響については、座りすぎが寿命を縮める|運動不足のリスクと最小習慣の完全ガイドで詳しく解説しています。
朝の光を浴びる機会が減り、体内時計がずれやすくなる
朝に浴びる光の量が減ることが、体内時計のずれにつながりやすいと考えられています。体内時計は光の刺激を目から受け取り、脳の視交叉上核という部分で時刻合わせを行っています。朝に光を多めに浴びることで、放っておくと少しずつ遅れていく体内時計が、日々調整されているとされています。
通勤があった頃は、駅までの道や乗り換えの合間に屋外の光を自然に浴びていました。在宅勤務ではこの機会が減り、起床後すぐに室内で画面と向き合う生活になりやすくなります。その結果、体内時計が後ろにずれ、夜になっても寝つきにくく、朝は起きづらいという悪循環が起こりやすいとされています。体内時計を整える仕組みと具体策は、体内時計(概日リズム)を整える光・食事・睡眠の完全ガイドで詳しく取り上げています。
変化② 仕事と生活の境界が消え、自律神経に負荷がかかる
もう一つの構造変化が、仕事と生活の物理的な境界が消えたことです。この境界の喪失が、自律神経への負荷という形で不調につながりやすいと考えられています。
オンとオフの切り替えが起きにくくなる仕組み
通勤には、気持ちを切り替える儀式のような役割があったと考えられています。家を出て会社に向かう時間が「仕事モード」への準備になり、退社して家に向かう時間が「生活モード」への切り替えになっていました。在宅勤務ではこの移動がなくなり、仕事の空間と生活の空間が同じ場所になります。その結果、始業と終業の境目があいまいになり、頭も体も仕事モードから抜けにくくなりやすいとされています。
交感神経が優位な状態が続くとどうなるか
切り替えが起きにくい状態が続くと、体は緊張を担う交感神経が優位なまま長時間過ごすことになりやすいと考えられています。本来は仕事が終われば副交感神経が優位になり、心身が休息モードに切り替わることが望ましいとされています。この切り替えがうまく働かないと、慢性的な緊張状態が続き、疲労感や寝つきの悪さ、慢性的な肩こりなどにつながりやすいとされています。自律神経の仕組みそのものについては、自律神経を整えるとは?仕組みと暮らしでできる調え方の完全ガイドで解説しています。終業から翌日の始業までの間隔が短くなりがちな在宅勤務の働き方については、勤務間インターバルとは?11時間の根拠を1日の時間配分から読み解く完全ガイドもあわせてご確認ください。
二つの変化が不調にどうつながるか
ここまでの二つの変化を、出社していた頃と在宅勤務とで比較すると、次のように整理できます。
| 観点 | 出社していた頃 | 在宅勤務になってから |
|---|---|---|
| 活動量 | 通勤・移動で自然に歩数が確保されていた | 歩数が平均約3割減少しやすい |
| 光曝露 | 通勤中に屋外の光を自然に浴びていた | 朝から室内で過ごし、光を浴びる機会が減りやすい |
| オンオフの区切り | 移動が仕事と生活を切り替える儀式になっていた | 境界があいまいになり、切り替えが起きにくい |
| 起こりやすい不調 | 比較的少ない | 肩こり・だるさ・寝つきの悪さ・気分の落ち込みなど |
こうして整理すると、在宅勤務の不調は個々の生活習慣というより、通勤という仕組みが担っていた複数の役割を、一度に失ったことの表れだと分かります。次章では、住まいを大きく変えずにできる対策を見ていきます。
住まいを大きく変えずにできる対策
引っ越しや大がかりな模様替えをしなくても、日々の動線を少し変えるだけで対策できることは多くあります。できそうなものから取り入れてみてください。
- 起床後すぐにカーテンを開ける:まず窓際で朝の光を数分浴びる習慣をつくると、体内時計を整える助けになると考えられています。
- 通勤の代わりに「儀式」をつくる:始業前に着替える、5〜10分だけ外を歩くなど、仕事モードへの切り替えの合図を意図的に用意します。
- 90分に1回は立ち上がる:タイマーやカレンダーの通知を使い、座りっぱなしの時間を区切ります。立って水を飲む、窓の外を見るだけでも構いません。
- 終業の合図を固定する:パソコンを閉じる、作業用の椅子から離れる、部屋の照明を変えるなど、仕事を終えたことを体に伝える行動を決めておきます。
- 画面と目の距離・休憩を見直す:長時間の画面作業は目の疲れにもつながりやすいため、意識的に画面から目を離す時間を挟みます。
すべてを一度に完璧にする必要はありません。無理なく続けられるものから、少しずつ生活に組み込んでいくことが大切です。目の疲れが気になる方は、目の疲れ・眼精疲労をやわらげる完全ガイドもあわせてご覧ください。
今の自分にどんな不調が出やすいか気になる方は、無料のセルフチェックで「いま整えたいテーマ」を確認できます。
注意点と受診の目安
対策を頑張りすぎることにも注意が必要です。歩数や光曝露を急に増やそうとして睡眠時間を削ってしまっては、かえって体への負担が大きくなりかねません。まずは無理のない範囲で、朝の光と適度な活動、オンオフの区切りを少しずつ意識するところから始めることが大切です。
だるさや気分の落ち込み、不眠が数週間以上続く場合や、日常生活に支障が出るほど強い不調がある場合は、自己判断で様子を見続けず、内科や心療内科などの医療機関に相談することをおすすめします。持病や服薬がある方は、対策を始める前に主治医に相談すると安心です。
よくある質問
在宅勤務でも通勤時と同じ歩数を目指すべきですか?
必ずしも同じ歩数を目指す必要はありません。健康づくりの目安として1日8,000歩前後がよく紹介されますが、まずは今より少し歩数を増やすことを意識するだけでも十分な一歩だと考えられています。
曇りや雨の日でも朝の光を浴びる意味はありますか?
曇天でも屋外の光は室内の照明よりかなり強いため、効果が期待できるとされています。可能であれば数分でもベランダや玄関先に出てみることをおすすめします。
出社と在宅が混在するハイブリッド勤務でも同じ対策は必要ですか?
はい、在宅日にリズムが崩れると出社日にも影響しやすいため、同じ工夫が役立つと考えられています。特に在宅の日ほど、朝の光とオンオフの区切りを意識してみてください。
オンオフの切り替えが苦手な場合、何から始めればいいですか?
まずは終業時の行動を一つだけ固定することから始めるのがおすすめです。パソコンを閉じて別の部屋に移動するなど、小さな習慣で構いません。
不調が続く場合、何科を受診すればいいですか?
まずは内科やかかりつけ医に相談し、必要に応じて心療内科や睡眠外来などを紹介してもらう流れが一般的です。強い症状がある場合は早めの受診が望ましいとされています。
まとめ
在宅勤務の不調は、通勤が担っていた「運動」と「光」の喪失、そして仕事と生活の「境界」の喪失という、二つの構造変化から生じやすいと考えられています。原因の仕組みを理解したうえで、朝の光を浴びる、こまめに立つ、終業の合図を決めるといった小さな工夫を積み重ねることが、無理のない対策につながります。強い不調や長引く不調がある場合は、自己判断を避け、医療機関に相談することが大切です。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の効果効能や治療を保証するものではありません。だるさや不眠、気分の落ち込みが続く・つらい場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
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参考文献
- 概日リズム睡眠・覚醒障害|e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 座位行動|e-ヘルスネット(厚生労働省)
- テレワーク・自宅待機による運動不足で生活習慣病のリスク|日本生活習慣病予防協会
- テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
- 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン|厚生労働省
編集:Wellstate編集部/監修:準備中
